ソノヘソ 


へっぽこな日々のこととその場の思いつき
by ソノヘソ
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脈をみて、体をみて、全部をみて。

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アーユルヴェーダの最初の診断は脈診だ。
そして毎朝毎晩の回診でも脈をとる。
どうやってやるんだろうな、と思いながら脈を取られていたら。
ドクターが「自分で脈を取ってみて」と言った。

ドクターたちは勘が鋭い。
秘密のイベントを企画して、秘密で進めていると、その現場に入ってくる。
特定の誰かにサプライズプレゼントを制作していると、その本人が入ってくる。
こっそり泣いていると気づかれる。

なにかそういう訓練でもしているんじゃないかというくらい勘が鋭い。
それもなんか医者の特質なのかもしれない。
そんな感じで脈の取り方を教えてもらった。
手首のとう骨の指二本下に人差し指、中指、薬指を置く。そして全体の印象を感じる。
体全体を巡ってきている脈をつかむ。

もちろん専門的にはいろいろあるみたいだけど、初心者なので、脈を感じ取るところから始める。
自分の脈を毎日とっていると、変化がよくわかる。
食べ過ぎた、動きすぎた、よく寝た、寝ない。
それらがはっきりと現れる。

同時期に入院していたほかのメンバーの脈も取らせてもらう。
夜の雨音みたいに静かな脈。暴れ太鼓みたいな脈。そわそわした猫みたいな脈。
全員違う。

お互いに計りあって、受けた印象をいうのもおもしろい。
言われたことは頷きあうところがある。
それを三日後一週間後にまたやる。
パンチャカルマが進むごとに脈がよくなる。
リズムが整い、力強くなり、三本の指に触れる脈が同じ強さになる。
脈は体の一部だけど、一部からでも体の全部がみえてくる。

そんな感じでお互いに脈を取り合って遊んでいた。
クリスマスも過ぎ、年末も近い頃。
日本では師走気分絶好調だろうけれどインドでは相変わらず、温く、牛がうろうろしているだけ。
「わー変わった」「元気だー」「なんかふらふらしてる」
と騒いでいたらば、24時間勤務のドクターが二人入ってきた。
一人は女のドクターは入院当初からいた。
もう一人の男のドクターは4日前くらいから登場したドクターで、背が高くハンサムで高そうな派手な服を着ている。
触診が強すぎて、質問が意味不明なので私は勝手に「ばか坊ちゃん」と呼んでいた。

女のドクターは私たちが触診しあっているのに目を留めた。
ちょっとこの女ドクターは調子良すぎるというか、裏表あるなというか、馴れ馴れしすぎるというかそんなところがある。
一同、目をあわせないようにする。
「あら、何をしているの? 脈診?」と女のドクター。
「ああ、うん」
「練習でもしていたの?」
「まあ。そんな感じ」
女のドクターは腕を差し出した。「あら、じゃあ私の脈をとってみて」
脈を取ってみて?
ドクターの腕は私の目の前にある。
ふふん、どんなもんかみてやろうじゃないって顔をしている。
これは挑戦か、挑戦だ。

私はカウンセラーだ。
脈だろうがなんだろうが情報を読み説いて、それを伝えるってんなら、得意分野である。
日本人ごときと舐められては沽券に関わる。受けてたってやろう。

と言うわけで、脈を取った。
感じるがままを言った。
私は英語が堪能ではない。
しかしそのときの入院メンバーにはプロの通訳さんがいた。
彼女の助けを借りて、彼女の精神状態や気にしているだろうこと、体のおかしそうな箇所を伝える。
「全部当たってる。何でわかったのよ!」女のドクターは目を丸くしていた。
「いや、脈でわかった」
「そうだ! 私の行動を観察していたからわかったんでしょう?」
彼女のことなんか興味ないから、観察しない。
そう説明しても、彼女は納得しない。
埒があかないのでこう提案した。
「じゃあ、後ろのドクターの脈診するわ。彼とは2回くらいしか会ったことないからね」

ばか坊ちゃんはにやにや笑いながら腕を差し出した。
いい骨、いい筋肉、いい時計だ。
小さい頃の栄養環境のせいなんだろうけど、マウシーさん(下働きのお手伝いさん)は細くて小さい人が多い。
140センチ台前半が平均だと思う。
ドクターたちは比較的体格が良い(そして賢そうな顔つきをしている)
けれど、160センチあるかな? という背の高さだ。

ばか坊ちゃんは日本人と遜色無い体格だ。
背は180センチ越えているし、ジムで鍛えているような筋肉の付き方をしている。
アメリカだったらアメフト部でチアガールのブロンド彼女がいるんだろう。
そういう種類の人間だ。
で、ばか坊ちゃんの脈を診ながら、感じたことを言った。
これは同僚のドクターがいる前で言うのはまずいかな? と思うこと
(たとえば勉強不足で焦っていて、身の置きどころが本当にない、とか、プライドみたいなのが邪魔してコミュニケーションに問題が、とか)
も伝えた。
それだけじゃ悪いので、素直さと体の丈夫さと頭はいいこと、も伝えておいた。

端から見ていた子の証言では、はじめはにやにやしていたばか坊ちゃんだけど
最後は目が潤んでいたそうだ。
「で、どうだったの? 当たってた?」と女のドクターが聞く。
「4割くらい?」とばか坊ちゃんは言う。

嘘だ。全部当たってるだろうと思った。
二人のドクターがでていった後、他の入院メンバーも
「あれは10割だったね」「ここで10割と言えないところがね」「ねえ」
と言っていた。私の思い上がりではないと思う。

脈診はそのあと回診によく来ていたドクターにもした。
脈診を教えていてくれてたし、
ちょっとしたお礼も込めて本気の脈診というかカウンセリングをした。
終わった後ドクターは「100%その通りだ。やり方教えて」と言った。
素直な奴だ。

あとびっくりすると脈は跳ね上がる。
嘘発見器もこの原理だな。感じたことを伝えていくと、本人の心当たりがあるところで脈が蛙みたいに跳ねる。おもしろい。
 
プロとして脈という情報の読みとりと解読を行えた。
インド人もびっくり。日本人の面目躍如である。
基本と原理の応用は大事だね。
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by sonoheso | 2011-11-30 17:44 | へっぽこインド滞在記
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